学芸研究室から(第5回)【刑事】生類憐みの令
刑事部門の常設展示室には、生類憐みの令が展示されています(写真1展示風景、写真2生類憐みの令)。生類憐みの令は、五代将軍徳川綱吉の時に出された、生きているもの全てを大切にしようとする法律です。儒教の影響を強く受けたもので、生命あるものすべてに慈悲の心をもつこと、それを民衆に教諭することを目的としました。
綱吉は数多くの生類憐み関連の法律を出しました。展示されているのは、その中の一つで、貞享4(1687)年に出されたものです。生き物や人が傷ついていたら、そのままにしないで様子を調べて届け出をすること、傷ついた生き物がまだ生きていたら見付けたものが引き取って世話をするように、放しても大丈夫な様子になったら、適切な場所に放し、外に放すことが安全でないならば、そのまま飼うように、といった事が書かれています。
展示の生類憐みの令では触れていませんが、生類憐みの令の中には犬の保護についての法律もあり、野犬を殺す事などを禁じました。そして、都市で犬の過密化、野犬化に対しては、四ッ谷、中野などに犬小屋が設けられました。最も大規模だったのが中野の犬小屋です。明治大学中野校舎の近く、中野区役所の一角には、犬小屋があったことを伝える犬の像も設置されています。(写真3 御囲場の犬の像)
日比佳代子(ひび かよこ/博物館刑事部門学芸員)