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街がキャンパス!神田学生街で学ぶ⑤ー明治大学小林尚朗ゼミナール・大森正之ゼミナール・島田剛ゼミナールの取組みから

「街がキャンパス」──街と協同したゼミナールの取り組みについて

──ゼミではそれぞれ神田の街とともに実践的な取組みをしておられます。そのことと、界隈の事物やお店などもご紹介いただければと思います。

大森 先程申しましたように、私のゼミで取り組んでいる養蜂事業は、ひょんなことからはじまっています。私は千代田区独自の環境マネジメントシステム(千代田エコシステム)を普及する一般社団法人千代田エコシステム推進協議会の理事長を務めており、当初、財団で日比谷図書館の屋上でミツバチを飼い始めたんですね。財団で継続が難しくなって、それを私のゼミで引き継いだ、という形です。あとから聞くと、虫好きの私がやりたそうな顔をしていた、などと言われるんですが。大学のいろいろなセクションに行って相談して、最後は大森ゼミで責任を持って行うという形で事業を認めてもらいました。

地元との関係も当然出てきます。猿楽町校舎で養蜂をするので、町会の方にきちんと話を通さないといけない。その際に神田猿楽町会長の渡邉圭一さんが明治大学出身ということもあり、話が非常に円滑に進みました。また環境の活動で交流があった方も神田猿楽町にお住まいでした。また書店や区議会の方々も来てくださって、2020年の初夏のオープニングを迎えることができました。前から区民の方々と一緒に養蜂をする形を取っていたので、継続して区の方々と協力してミツバチを飼うことになりました。

財団で養蜂事業をしていたときは補助金をもらっていたので販売ができませんでした。養蜂がゼミの活動となってから、販売のことをゼロから考える必要が出てきました。そこで活動的な人たちがネットワークを広げていって今に至っています。


猿楽町校舎での養蜂活動

明治大学の卒業生たちにハチミツを買ってもらいたいという気持ちで通販もはじめました。最初のヒット商品が「3蜜セット」。3種類のハチミツをセットで売り始めました。一方で神保町に来ないと買えないというところも大事ですから、そこにフックをかけまして、みんなでハチミツを販売してくれるお店を開拓してきました。私も行きつけの飲み屋さんにお願いしたりしました。

「3蜜セット」

養蜂は、なかなかハードルが高い面もあるんですが、今後は地元の高校に通学している人たちにも協力してもらいたい、といったことも考えています。

今回、千代田区障害者福祉センター「えみふる」との活動連携もできました。私は政治経済学部でボランティア活動の単位認定制度を作ったメンバーでもあるので、これはとても良いことだと思っています。コロナ禍で十分にできないですが、この活動をきっかけとして、こうした施設の方々と縁ができて、学生がボランティアに行く、ということにまで連携ができていくと良いなと思っています。

先程申し上げましたように、私は地元の中学校出身ですので、地域に残っている方々とのつながりもあります。また、明大通りのプラタナスの街路樹並木存続の活動もしていたことで縁ができて、月に一度明大通りのゴミ拾いのボランティア活動もやっています。明治大学のボランティアサークルもキャンパス周辺を掃除したり、街路樹の下の植栽の手伝いなどもしているのですが、もう少し一般学生を含めて地元と環境だけではなく、商品開発や地域振興など様々な切り口で交流を深めていって、例えば空き住宅をゼミで掃除をしたり、庭木を切ってあげるといったこともありうるのではないかと思っています。

数年前ゼミでそういった研究をしました。地元の大学の建築関係のゼミなども参加して空き家のリノベーションをして学生がそこに住む。その代わり災害があったときのボランティアのオブリゲーションを負う、あるいはコロナ禍のような事態に直面したとき食料を届けるとか、そういった近隣との付き合いを作るということが良いのではないでしょうか。

明治大学は都会の大学であるため、通学している学生が多く、一人暮らしをして、近隣と助け合って生活しているような学生が決して多くない。私のように、地元と縁がある人間を一つの取っかかりとして、地元に学生が入ってくる形が良いのかなと思います。

再開発というのは一種乾ききったドライな世界です。それをどう乗り越えるか。例えば地元のお店が危機に瀕しているときに、学生・教員がそれをどうもり立てていくか。こういうプランがまちづくりに必要だと思います。またガラス窓が割れているような住宅に暮らす高齢者がおられます。

そういうところにそれこそハチミツをうまく届けられたら、と思います。シングルマザーのサークルや、子ども食堂といったところに学生も積極的に関わってもらいたいと思います。学生と地元愛のある楽しい活動をしたいなと考えています。


看板建築の例(栄屋ミルクホール 神田多町 2022年2月に新店舗移転)

この界隈の好きな景色というと、独特な看板建築という独特の建築様式がありますよね。こういったものを残していくためにどのように応援していくか。これを大学なり学生がかかわっていくとより素敵な街になるのかな、と思います。

私は中学校はこの街に通っていて、高校時代も通学途中にある街でした。大学時代も、ジャズが聴けてお酒が飲めて、本があってということで、週1回は通っていた街です。このように大好きな街にある明治大学に着任して非常にうれしかったことを覚えています。だからこそ街に恩返しがしたいなという思いもあります。

大塚 大森先生はいろいろなパイプをお持ちで、街のことも大変良くご存じです。そのこともあって、さまざまなことが前に進んできました。

養蜂活動をきっかけとして、千代田区の障害者福祉センター「えみふる」の職員の方々、猿楽町近辺のお店、大和屋履物店の船曵さんなどと出会い、街との関係を深めてこられました。またその中で島田ゼミの中山さんともお会いすることができました。こういった方々との関係を一回きりのものとせずに、少しでも興味を持ってくださる方と、これからも一緒にやっていけたらなと思っています。

好きなお店は、この活動を通して出会い、さまざまなご縁を繋いでいただいている、錦華公園向かいのカフェ「On a slow boat to…」です。ここで1月31日には養蜂活動報告会も実施させていただきました。
私たちのハチミツ(MEIDAI ECO HONEY)を販売するだけではなく、ハチミツ販売するだけではなく、ハチミツを使用したハニーバタートーストをメニューとして提供してくださっています。私の友人が、私が大森ゼミであることを知らずにたまたま「On a slow boat to…」のハニートーストが好きで、お店で鉢合わせたことも嬉しい出来事でした。

もう一軒好きなお店を挙げますと「キッチンカロリー」です。時代の流れに飲み込まれずに自分たちの両足で立っているお店にはこれからもすっと残っていって欲しいと思います。

佐藤 私が好きなお店はスペイン料理の「オーレオーレ」ですね。

次回も「街と協同したゼミナールの取り組みについて」お聞きします。
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