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街がキャンパス!神田学生街で学ぶ⑥ー 明治大学小林尚朗ゼミナール・大森正之ゼミナール・島田剛ゼミナールの取組みから

「街がキャンパス」──街と協同したゼミナールの取り組みについて

──ゼミではそれぞれ神田の街とともに実践的な取組みをしておられます。そのことと、界隈の事物やお店などもご紹介いただければと思います。


島田 私は実家が書店ということもありまして本が好きです。地元・関西の大学に進学したんですが、就職活動で東京に行くときには必ず神保町に行っていました。その街がだんだん変化していく。やはり本が売れなくなっているんですね。実家の書店も創業100年になろうとするときに店を畳みました。書店の跡地はドラッグストアになってしまいました。神保町もドラッグストアが増えてきています。

街に一種独特な雰囲気を与えていた書店がなくなる社会的な影響を、実家の書店の出来事で強く感じていました。神保町の書店がドラッグストアやコンビニエンスストアに置き換わっていってしまうのは、より影響が大きいことだと思います。そうならないように、書店がこれからも経営していけるような街にするにはどうすれば、と考えて活動をしています。また、今の学生たちがもっと古書店に親しんでほしいと思いもあります。学生が一緒になって、書店の経営維持にどのようにつなげていくか、ということを考えています。

中山 コーヒー作りに協力していただいたのは、2020年に本社を神保町に移された株式会社ミカフェートです。同社の協力がなければSDGsコーヒーの製品化どころかプロジェクト自体出来ませんでした。まさに「街がキャンパス」です。ですのでSDGsコーヒープロジェクトも頭に「神保町発」と冠がつきます。

神保町での取組みということで、街のいろいろな方にお話を伺いました。たとえばSOCIAL GOOD ROASTERSさん、大和屋履物店さん、北沢書店さん、高山本店さんなどです。街並みの移り変わりや経営の実態など、神保町でずっとお店を営んでおられるがゆえの貴重なお話を多々していただきました。

その一方で、今のようなコロナ禍をきっかけ通して街も変化しなくてはいけない、ぜひ学生の力を貸してほしいとお話をいただくこともあります。若い力を街の方達も求めているんだと感じております。

 好きなお店は、私が盆栽が趣味で、神保町のことを好きになる前から「神保町いちのいち」に通っていました。また、こうやって縁があって神保町に通うようになって、それまであまり古本に興味がなかったのですが、色々な専門書店があることを知って、本にハマるきっかけになりました。

学生のほとんどにとって神保町は敷居が高いと思っています。とくに古書店は入りにくいところがあります。一部でしか地域の方々が大学や学生の力を求めていることは知られていません。私たちのプロジェクトを通してさまざまな方にお話を伺って、街が若い力を求めているということを知って、ホームページやSNSで発信をしていますが、なかなかそういったニーズが学生に浸透するには至っていません。お互いが歩み寄って、学生は神保町に向かい、店は学生が街やお店に入りやすい雰囲気を作っていただくような形になればもっと神保町全体が変わっていくのではないか、と思っています。

曾我 私たちが目標にしたのは、私たちの開発した神保町珈琲を通して「神保町といえばコーヒー」というイメージを広めたい、ということです。いま中山さんがおっしゃったように、神保町には敷居が高いというイメージもあると思います。ただお店に入って味わわないとわからない良さがあるのも確かです。店が敷居を下げることばかり求めるのではなく、あえて敷居を下げないままでいてほしいなあと思う部分もあって、そのバランスが非常に難しいと思っています。学生が中途半端な気持ちでお店に入れば良いのではなく、「自分事」として街に入り、街づくりに関わっていく必要があるとも思っています。

ですので神保町には本当はこんな魅力があるんだ、ということを広めていくことが課題だと思います。コーヒーなら、小林ゼミのBINGOにも出ている「Glitch Coffee and Roasters」のような新しい喫茶店もあれば、昔からの純喫茶もあり、という具合に新旧の良いところがミックスされているのが神保町の面白いところかと思います。古書店も同じような新旧の魅力があります。それらの魅力を伝えることが私たちの開発している商品の存在意義の
1つかと思っています。

20名のゼミ員皆が同じ気持を持って取組みをしていくために、あと1年しっかりやっていけたらと思っています。


神保町珈琲

島田 曾我さんたち3年生が作った神保町珈琲のパッケージデザインのコーヒーカップのカラーは明治大学の紫紺をベースにしています。コーヒーと神保町と明治大学が一緒になって取り組んでいきます、という意味が込められたこのデザインを3年生と一緒に考えました。明治大学と神保町がどう近くなっていくかがテーマです。

私がこの界隈で挙げておきたいのはカレーのお店です。仕事でインドに3年ほど住んだこともあり、この界隈はレベルの高いカレーのお店があると思います。神保町にはいわゆる欧風カレーのお店も多いですが、南インド(三燈舎)、バングラデシュ(トルカリ)、スリランカ料理についてもレベルの高いお店があります。今日の昼もスリランカ料理の「タップロボーン」というお店に行きました。カレー競争のなかで、昔からあるカレー屋さんだけではない新しいお店が入ってきている。これが続いていくとすごく面白い街になるのではないか、とも思っています。

大森 私の友人がこの近くで「青山ティーファクトリー」という店を経営していて、セイロンティーを輸入販売しています。高校の同級生です。いろんなお店がありますよね。

小林 神保町はいろんなジャンルの古書店がありますよね。私の専門ということに限らず、楽譜を扱う古書店、江戸時代の古典籍を扱うお店、戯曲ばかりのお店など……。日本人であろうが外国人であろうが人を連れていくのに事欠かないですよね。それがとても好きなところです。文化の香りがしますよね。


あと喫茶店です。とくに飲み会のあとの2次会、3次会で行く喫茶店が好きです。この界隈の喫茶店ならお酒が飲みたい人は飲めるし、飲まない人はコーヒーを飲める。ケーキも食べられます。誰でも受け入れてくれる。そんなところが良いですね。

私たちのゼミがフェアトレード大学を目指そうと考えたのは東京オリンピックの開催が決まった頃です。2020 年に、千代田区の真ん中にある明治大学がフェアトレード大学になったらいいなと思ったんですね。リオデジャネイロやロンドンもフェアトレードタウンでした。オリンピックの開催地が、その期間だけでもフェアトレードタウンになるという流れもあったので、東京都全体でやるのは難しいかもしれないですが、明治大学がそれをやれたら良いのではないか、と思ったんですね。できたら近隣と一緒にやれたらと考えていました。いま明大マートでも販売しているんですが、オーガニックコットン国際認証の「GOTS」と、「国際フェアトレード認証」のW認証を受けたコットン製のトートバッグを作りました。これは神田錦町のフェアトレードコットンを扱っている株式会社フェアトレードコットンイニシアティブと一緒に

小林ゼミ開発トートバッグ(明大マート店頭で購入可)

なって作ったものです。またカフェパンセで、神田淡路町のNPOパルシックが取り扱う、東ティモールの紅茶やコーヒーを仕入れて販売したりしました。大学の近くに所在する企業やNPOですと、ゼミの時間に出かけてきていただいて現地のことなどを講義いただけるし、学生も簡単にお邪魔できます。そういったことから、周辺の方々と積極的に交流するようになりました。

 古書については、最近考えていることがあります。いま私たちのゼミで、3年と4年がサブゼミの時間にビブリオバトルをやっています。1人 5分程度で自分が読んだ本を紹介するというものです。新しく本を読まなくてはいけないというのがルールです。本を図書館で借りてくる学生もいるし買う学生もいます。そんななか、あるゼミ生が、古書店で100円で買ってきた本をビブリオバトルで紹介したんですね。これは面白いんじゃないかなと思いました。これから、ビブリオバトルで使う本を古本屋で買ってこなくてはいけないことにしたらどうか、などと考えています。


小八木 今回私たちは「MEIDAI BINGO 駿河台ver.」を制作しました。以前制作した「MEIDAI BINGO 和泉ver.」の駿河台バージョンを作り、展示に来ていただいた方に配って、この界隈の名所やグルメをもっと知ってもらおう、そしてBINGOカードに使用したバナナの茎から作ったバナナペーパーを通して、フェアトレードについてもっと知ってもらおう、という私たちの願いが込められた企画になっています。

MEIDAI BINGO 駿河台Ver.(特別展示「神田学生街 140年の今昔」をご覧になるか、カフェパンセでコラボメニューをお召し上がりになりアンケートにお答えいただいた方にプレゼント中 4/10まで)

 BINGOカードに紹介したなかから好きな店を紹介したいと思います。私はカレーとコーヒーがとても好きで、とくにインドカレーがとても好きです。BINGOでご紹介した「マンダラ」ではナンを3 枚も食べてしまいました。ナンが焼きたてモチモチで美味しいんですよね。

コーヒーでは「Glitch」を紹介しています。ここではコーヒーの豆それぞれに個性があることを教えていただきました。コーヒーが好きな学生やこの界隈の方も新しいコーヒーとの出会いがあるのではないかと思います。店内はコーヒー豆の匂いが漂っていて、都会の喧騒とは離れた落ち着く空間が広がっています。

BINGOでもわかると思いますが、この界隈はいろいろなカルチャーが垣間見える、散歩しても飽きない街だなと思っています。喫茶店、カレー、古書、スポーツ、音楽、あとニコライ堂(東京復活大聖堂)や、カトリック神田教会などの建築物もありますよね。歩いていても全く飽きません。私はそれに気づくのが遅かったので、もっと周囲を巡り歩いて神保町の魅力を知っておけば良かったと後悔しています。本来駿河台キャンパスに通い始める3年生になった時期にコロナウイルスが流行し、オンライン授業がメインになってしまい、リバティタワーや神保町の魅力を知るのが遅くなってしまいました。

この BINGOもそうですが、大学がこの界隈に関するリーフレットを作成してリバティタワーの1階に置いたりすれば、神保町のカルチャーについて知ることができる媒体にもなるし、このあたりのお店はちょっと入りにくいと思っている学生たちが、そのお店を訪れるきっかけになると思います。リーフレットを持っていけばお店に何かサービスしていただける仕組みがあったりすると、より学生が街に足を向ける機会になるのではないかと思います。これはお店にとってもメリットが大きいのではないでしょうか。大学が学生の街散策を後押しするような仕組みが構築されれば、街と大学がWin-Winの関係になると思います。

此上 Meiji Fair Trade Clubが取り組んだまちチョコは、フェアトレード専門ブランドである「ピープルツリー」のチョコレートを購入して、そのパッケージを学生と一般の方を含めて公募しました。大学生の他にも、社会人や小学生の方まで応募をいただきました。

応募いただいたデザインの中から採用を決定し、それをパッケージして販売するまでが目標でしたので、実際にチョコを置いていただくべく、いろいろなお店に営業をしました。最終的には個人経営の喫茶店を中心に15店舗以上がご協力をくださいました。

そのなかの「LAULE'A」様はオーガニック商品を扱っているお店です。「LAULE'A」様からぜひフェアトレードの知識を得たいので勉強会をしてほしいとお願いされました。最初は企業の方相手にそんなことができるかなと不安に思ったものの、引き受けて私が発表しました。
当日は、私たちFair Trade Clubのメンバーがたった5人だったのに対して20人以上の社員さんがされていて、少し腰が引けましたが、発表が終わった後に「非常に良かった、勉強になった」という反響をいただけて、思い切ってやって良かったと思いました。

それ以来「LAULE'A」様と交流が続いていまして、つい先頃も御茶ノ水のクリーン活動に誘っていただきました。「パタゴニア東京・神田」の方もおられて、これからの交流について話をしました。こうした形で企業と交流の輪が広がっていき、活動の輪をもっと広げていければいいと思っています。

まだ2年生でキャンパスが違うため、この界隈にはまだそう日常的には通えていないんですが、活動の過程で個人経営のカフェの方が非常に丁寧に私たちの話に耳をかたむけてくださったことが印象に残っています。明大BINGOで紹介されている「ラドリオ」さんなどはご店主が非常に優しく接してくださいました。3年生になったらぜひ常連になりたいと思っています。神保町の街並みは歴史がありますよね。私は地方から上京してきたのですが、上京前から神保町のことは知っていました。夏目漱石の小説をはじめ通してその名前がよく出てきて、古本屋さんがいっぱいある良い街だなというイメージを抱いていました。東京というと最先端の技術も魅力的なのですが、古い街並みを感じることができるのが、神保町の魅力だと思っています。

どうやったら学生と学生街が仲良くなるかという点に関してですが、僕も小林ゼミに入るまでは思っていなかったのですが、そんなに学生の頃から企業と関われる機会があるとは意識していませんでした。しかし、実際に企業の方とかかわる中で、企業の方も学生の力を求めているということがわかってきました。だからこそ、学生はそのニーズに応えて活動できるということを、学生はもっと意識したら良いのではないかと思っています。

次回は、「取り組みを通して得られたこと・今後の取り組みに向けて」についてお聞きします。
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